久しぶりの矯正歯科学講座。
歯がデコボコに並んでいる状態を crowding という。
歯がきっちりと並ぶスペースが足らないと生じる。
骨が小さい場合と歯が大きい場合とその両方の場合、3っつが考えられる。
Arch length discrepancy とも表現されて、スペースが足らない場合には、”-OOmm ”のように表現される。
うーん、こりゃすごいね。 crowding だらけだね。
歯並びばかりに目がゆくけれど、歯の表層の色調にも注意していただきたい!
白く濁ったり、黄色く着色したりしている。 これはごく初期のカリエスであって、”CO” シーオー と表現される。
このレベルのカリエスは、すぐに削らなくてもブラッシングとフッ素の塗布で治せることが多い。
しかし、油断すると本当のカリエスになってしまうぞ。
この方は、あまりに歯がデコボコだったので。ブラッシングが行き届かずこうなったのだろうと推測される。
もうひとつ、歯の根元の近くの歯肉の色調に注意されたい!
赤いなかでうすいピンク色に白っぽくなっている部分がある。
これは歯肉がうすくなっていて、下層にある骨膜の色が透けて見えているのだ。
歯肉が薄いって?
歯周病になりやすいんだ。 すぐに歯肉が下がりやすい状態にあるんだ。
歯列から外側に、つまり唇や頬の方に位置している歯にこの傾向がみられる。
下顎にみられるね。
骨の中心部分から外側に外れた位置にある歯は、このような危険な状況にある歯が多くなる。
もし、この歯列を非抜歯、抜歯なしで並べたらどうなるだろうか?
すべての歯が骨の外側に出てならんでくるので、一見きれいに見えても歯肉は危険な状況になる。
話は歯列の話に戻る。
Arch length discrepancy は ”-15mm ” もあるかもしれない。
日本人なら珍しいことではないけれど、世界標準からするとびっくりするようなケースだろう。
こういう状況は抜歯をせざるを得ない。では、どの歯を抜くのか?
普通は前から4番目の第一小臼歯を抜歯する場合が多い。
その理由は、矯正では犬歯を大事に考えている。 犬歯を正しい場所に誘導することが治療では重要になる。
ところが、犬歯の萌出が遅い時期になるので犬歯はこの方のように位置以上を起こすことが多い。
それを治療するには、犬歯のすぐ後ろの第一小臼歯を抜歯することが昔から行われてきた。
この方の抜歯はどうするか?
右側(向かって左側)は5番目の第二小臼歯が圧平されて幅が小さくなっている。
この歯はあまりに小さいので、残すには忍びないので抜歯をすることにして、
その前の4番目の第一小臼歯を残すことにする。
左側(向かって右側)は4番目の第一小臼歯を抜歯することにした。 こちらは普通のやりかただ。
こちらも右側と同じ傾向があるけどどうしてかって?
そうなんだ。
小さい歯を抜歯して大きな歯を残すことはとても大事なことなんだ。
それはよくわかっているんだけどね、小さな歯の抜歯では抜歯によって得られる空隙も多くはない。
治療には有効にはならないんだ。
そこが難しい。
ついでに下顎。
これは議論の余地はない。
左右側ともに4番、第一小臼歯の抜歯が適切である。
犬歯の位置異常が激しいので、犬歯を正しく修正するために4番の抜歯を行う。
こういう場合に、上顎と同様に5番を抜歯したりすると、治療はうんと困難度を増す。
より時間も必要となる。
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