昨日の症例の続き
治療前の歯ぐきの状況
歯ぐきが退縮して歯根が一部露出している。
歯が骨の中心になくて、骨の外側にあればこのようになりやすい。
もし、ブラッシングの力が強すぎたり歯周病が進むとこれを加速することになる。
だから、抜歯をして骨の中心に歯を位置させて、歯列を適正な大きさにすることは意味がある。
歯列がデコボコだからと言って、やたら歯列の拡大をすることはよくないことがわかるかね?
それでは、決定的なエビデンスをお示しする。
これは、別の症例。
上顎の歯列のCT画像。
ご存じCTは物体の横断面が観察できる。
U字型に見えるのは、歯を取り巻く骨。
丸や楕円に見えるのは歯根。
歯根の中心に見えるのは歯髄。
骨の表層は皮質骨といって、骨の密度が緻密すなわち硬い骨になっている。ここでは白く見えている。
中の部分は海面骨といって、骨髄組織で血管に富む組織でスポンジ状になっている。白以外の色に見えている。
周囲の青いのは軟組織。
さて、今回問題となるのは歯根が骨のどの位置にあるのかという問題だ。
この症例の上の前歯の歯根は、骨の外側に位置していることが明らかに見える。
特に注目すべきは、前歯の歯根の外側の骨はきわめて薄いことである。
その反面、歯根の内側の骨は厚みが多いことである。
こんな場合に、デコボコがあるからと言って、非抜歯治療で歯列を拡大するとどうなるかね?
今よりも、歯が外側に動くとどうなるかね?
薄い薄い骨はいったいどうなるかね?
歯根は骨を突き破ることになる!
だから、抜歯をして歯列を適切な大きさにすることはより安全な治療なのである。
これは、同じ症例。
下顎の歯列のCT画像。
上顎よりも骨の外側の皮質骨が明瞭に見える。
下顎はこのように、骨の外側が強固にできてる。
さて、歯根の外側と内側とどちらに骨がしっかりとあるのかわかるかね?
上顎と同じ様子が見れますね。
歯根の外側の骨は極めて薄いことが見て取れる。
この症例に特別にみられることではなくて、これは一般的にこのような様子であることをご理解いただきたい。
したがって、
歯列の凸凹を改善するために、歯列を拡大することは極めて心配の多いことだ。
という重要なエビデンスである。
これが、決定的な証拠であることがおわかりだと思う。
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